オーガニック食品と健康の関係について、興味深い研究結果が発表されました。フランスで行われたこの大規模調査は、オーガニック食品の摂取頻度とがん発症リスクの関連性を探ったものです。結論から言えば、オーガニック食品を頻繁に選ぶ人は、がんになりにくい傾向が見られたのです。
この研究は2018年に発表され、7年間にわたる追跡調査を行いました。対象となったのは、なんと68,946人もの男女。平均年齢は44歳で、幅広い年齢層をカバーしています。これだけの規模の調査は、信頼性の高いデータを提供してくれます。
残念ながら、調査期間中に1,340人の方ががんを発症しました。乳がん、前立腺がん、大腸がんなどが主な症例でした。しかし、この数字の中に、オーガニック食品と健康の関係を示す重要なヒントが隠されていたのです。
オーガニック野菜セット
研究方法は非常に興味深いものでした。約7万人の参加者に対して、オーガニック食品の選択頻度を尋ねるシンプルな質問が行われました。「ほとんどいつもオーガニックを選ぶ」という回答には2点、「たまに選ぶ」には1点、「選ばない」には0点が与えられました。
さらに、この調査は16種類の食品カテゴリーに分けて行われました。野菜や果物はもちろん、肉、卵、乳製品、インスタント食品、油、調味料なども含まれています。各カテゴリーでの選択頻度を合計すると、最高で32点(16×2)のスコアとなります。
このスコアリングシステムにより、参加者のオーガニック食品選択傾向を数値化し、4つのグループに分類しました。最もスコアが高いグループから順に、オーガニック選択頻度が高い人、まあまあな人、少なめの人、少ない人という具合です。
結果は驚くべきものでした。オーガニックスコアが高い人々には、いくつかの共通点が見られました。まず、社会的地位が高く、教育レベルも高い傾向がありました。また、収入も比較的高めで、健康的な食生活を送っている人が多かったのです。
具体的には、植物性繊維や植物性タンパク質の摂取量が多く、ビタミンやミネラルもしっかり摂っていました。一方で、赤身肉や加工肉、牛乳の摂取量は少ない傾向にありました。これらの食習慣は、がんリスクを低減させる可能性のある要因として知られています。
そして、最も注目すべき結果が、がん発症リスクとの関連性です。オーガニック食品を頻繁に選ぶ人は、そうでない人と比べて、がんになりにくいという結果が得られたのです。この結果は、他の要因を調整した後でも統計的に有意でした。
しかし、この研究結果を解釈する際には注意が必要です。オーガニック食品を選ぶ人々の特徴が、がんリスクの低下に影響している可能性も考えられるからです。例えば、高収入や高学歴、健康的な生活習慣などが、がんリスク低下の真の要因である可能性も否定できません。
研究者たちは、これらの要因を調整して分析を行いました。生活レベル、食事内容、飲酒習慣、喫煙習慣など、がんリスクに影響を与える可能性のある因子を考慮に入れたのです。その結果でも、オーガニック食品の摂取頻度とがんリスク低下の関連性は維持されました。
ただし、この研究にも限界があります。例えば、すべての種類のがんでリスク低下が見られたわけではありません。また、一つの研究結果だけで断定的な結論を出すことはできません。さらなる研究や検証が必要です。
オーガニックサプリメント
オーガニック食品と健康の関係について、さらに深く掘り下げてみましょう。アメリカの非営利団体Environmental Working Group(EWG)が発表している「ダーティーダズン」リストをご存知でしょうか。これは、農薬残留量が多い12種類の果物と野菜のリストです。
このリストは毎年更新され、消費者がオーガニック食品を選ぶ際の指針となっています。2023年版のリストには、以下の13種類(今年は13種類でした)の果物と野菜が含まれています:
1. イチゴ
2. ホウレンソウ
3. ケール、コラード、マスタードグリーン
4. ネクタリン
5. モモ
6. ナシ
7. サクランボ
8. ブルーベリー
9. グリーンビーンズ
10. ピーマン
11. セロリ
12. トマト
13. ブドウ
これらの食品は、通常栽培では農薬使用量が多いため、可能な限りオーガニックを選ぶことが推奨されています。例えば、イチゴは農薬残留量が最も多い果物の一つです。その甘い香りと柔らかい果肉は害虫を引き寄せやすく、農薬なしでの栽培が難しいのです。
ホウレンソウやケールなどの葉物野菜も、害虫の標的になりやすいため、多くの農薬が使用されます。これらの野菜は表面積が大きいため、農薬が付着しやすく、洗い落とすのも難しいのです。
ネクタリンやモモなどの柔らかい果物も、病気や害虫に弱いため、多くの農薬が使用されます。これらの果物は皮ごと食べることが多いため、農薬摂取のリスクが高くなります。
オーガニック食品を選ぶ際には、いくつかの注意点があります。まず、「オーガニック」というラベルだけで判断するのではなく、その食品の生産方法や認証基準をよく確認することが大切です。国や地域によって基準が異なる場合があるため、信頼できる認証機関のマークを探すことをおすすめします。
また、オーガニック食品は一般的に価格が高くなりがちです。すべての食品をオーガニックに切り替えるのは現実的ではないかもしれません。そこで、先ほど紹介した「ダーティーダズン」リストを参考に、農薬残留量が多い食品を優先的にオーガニックに切り替えるという方法があります。
一方で、EWGは「クリーン15」というリストも発表しています。これは農薬残留量が少ない15種類の果物と野菜のリストで、これらの食品は通常栽培のものでも比較的安全に消費できるとされています。
オーガニック食品を選ぶことは、単に個人の健康のためだけではありません。環境保護や持続可能な農業の支援にもつながります。化学肥料や農薬を使用しない有機農法は、土壌や水質の保全、生物多様性の維持に貢献します。
最後に、オーガニック食品を選ぶことは、より健康的で環境に配慮したライフスタイルへの第一歩となります。しかし、それだけでなく、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠など、総合的な健康管理が重要です。オーガニック食品を取り入れつつ、全体的な生活習慣の改善を目指すことが、真の健康につながるのではないでしょうか。
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